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身体の痛み
Q:マッサージは対症療法??「オフセット鎮痛」とは?

オフセット鎮痛とは、「直前に強い刺激にさらされると、直後の比較的弱い刺激を一時的に感じなくなる現象」と言えます。どういうことでしょうか。わかりやすいように、例を挙げます。
銭湯でお風呂に入っている場面を想像してください。いくつかの湯舟があり、最初に43度のお湯に入ったとします。すると入る時に「熱い」と感じます。次にさらに熱い45度のお風呂に移ります。するとさらに熱く感じます。しばらくそこにつかってから、最初に入った43度のお風呂に戻ったとするとどうなるでしょう?43度のお風呂が今度は熱いとは感じないのが想像できますか?全く熱くない、と感じるはずです。これは直前に45度の熱刺激にさらされたため、その後の刺激を本来なら熱いはずなのに一時的に感じなくなっているのです。このような現象を「オフセット鎮痛」と呼びます。
つまり、強い刺激に一時的にさらされると、そのあとの一定の時間は「痛み」や「熱さ」を感じないように人間の身体はできています。
これと同じ現象がマッサージの直後に生じます。つまり普段の痛みよりも強い刺激(もまれる)が一定時間加わることで、その刺激が終わった直後には、いつもの症状を感じず、「痛くない」「軽い」などと感じる現象のことです。
しかしオフセット鎮痛の鎮痛効果はずっと続くわけではないため、マッサージもその日は良いかもしれませんが、翌日には元に戻ってしまいます。
元に戻ってしまうだけでなく、後述するように異常な血管が肩こりの原因になってしまう人は、その血流を増加させてしまうので、翌日以降にむしろ悪化させてしまう可能性すらあります。ですから一時的に良くなるからといっても、人によってはマッサージを繰り返し受けることのデメリットもあるわけです。そのような場合、長期的にみると肩こりの場所へのマッサージはお勧めできません。
Q:ストレスで痛みに敏感になる?「下降抑制系」とは?

人間は、実は瞬間瞬間に絶えず「痛み」などの不快な信号が身体から脳に伝わっています。何も痛みを感じていないときでも、弱い痛みの信号が脳に送られているのです。とても弱い信号です。これらの弱い信号は、脳に到達する前にブロックされ、私たちの意識まで昇ることはありません。
携帯電話には周りの雑音(ノイズ)をシャットアウトして、話している人の声をクリアに聞くための仕組みがありますが、脳も全く同じようにこのノイズキャンセル機能を持っています。ただしカットしているのは脳の場合は音ではなく、痛み信号です。この仕組みを専門的には「下降抑制系(かこうよくせいけい)」と呼びます。
この仕組みがあるおかげで、ある程度の弱さの痛みやだるさなどの症状は、ノイズとしてカットされ、脳で私たちが感じることはないのです。
ところがストレスが高い状態になりますと、このノイズキャンセル機能が弱くなってしまいます。
このためストレスがかかっていると、普段感じないくらいの弱い痛み信号も感知するようになります。このためストレスの高いときは痛みに気づきやすくなってしまうのです。
たとえば、職場でストレスを感じている人は、ノイズキャンセルの仕組みが弱まります。このため職場に到着したとたんに頭痛や腹痛などを感じる、ということもあり得るわけです。
もちろん誰でもプレッシャーを感じることは当たり前ですから悪いわけではありませんが、少し気が張っているかもしれない、などと力を抜いてあげることも必要です。
またそのようなストレスの度合いや痛みとの関係を深く知りたい方はぜひ専門の医療機関を受診してみてください。
著者プロフィール
奥野祐次 M.D., Ph.D.(医師・医学博士)
オクノクリニック 総院長
専門分野:慢性疼痛、モヤモヤ血管に対する血管内治療、カテーテル治療・動注治療、画像診断(MRI・エコーを活用した精密な痛みの診断)
2006年3月、慶應義塾大学 医学部 卒業。2008年より放射線科医として血管内治療に従事し、2012年3月、同大学大学院医学研究科博士課程を修了(研究テーマ:「病的血管新生」)。同年4月より江戸川病院にて運動器疾患に対する血管内治療を専門に担当。2014年には同院「運動器カテーテルセンター」センター長に就任。2017年10月、神奈川県・センター南にて「オクノクリニック」を開院。
現在東京を中心に全国10院を運営するオクノクリニックの総院長。運動器カテーテル治療の専門医として、長年にわたり痛みに悩む患者の治療に取り組んでいる。

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